『オペラ座の怪人』を憎めないという話
オペラ座の怪人はわかりづらい作品だという感想をいくつか見かけていたのでやや不安だったけれど、ずいぶんと前に翻訳版を読んだことがあったのでストーリーについて行けないということは無かった。逆に言えば、まったくの初見では厳しいのかもしれない。
公演が始まってすぐに実感したミュージカルの特権のひとつは、手品のようにあっという間に入れ替わる舞台セットを楽しめること。
夢のようにきらびやかな仮面舞踏会や頭の上を通り過ぎるシャンデリアも鮮烈だったけれど、地下湖で揺れるたくさんの蝋燭が不気味でうつくしくて印象的だった。
ほんのすこしでも考えてみれば、いくら悲しい過去を抱えているとはいえファントムのしたことは紛いのない悪なのだとすぐに気がつくのだけれど、それでもやっぱり孤独な静けさが充満する地下湖で独り消えたファントムを嫌いにはなれないのが不思議だし、作品やキャラクターの魅力だなあ。醜い自分に与えられた愛する人からのキスが自分の為のものではないというのがあまりにも悲しくて、最後はすこし泣いてしまった。
2時間40分はあっという間とはいえない時間で、そのあいだずっと集中して観ているのは疲れるしお尻も痛いしで結構大変なのだけれど、そんなことは吹き飛ばしてしまうライブはやっぱり素晴らしい。また観に行きたいな。
ちなみにオペラ座の怪人はフィギュアスケートでもよくテーマとされる作品で、近年では無良崇人さんのプログラムが大好きでしょっちゅう見返している。白手袋を仮面に見立てるという衣装のアイデアが素晴らしいと思います。