『いのまま』生きることにあこがれる話
おいしいものを食べるのが好きだ。
おいしそうなものが出てくる本や映画も。
でも、料理をするのはめんどくさい。
材料が5つも6つもあると、もうそれだけで嫌になる。
オカヤイヅミさんの料理エッセイ『いのまま』には、手の込んだ料理は出てこない。
『コーンスープパングラタン』や『高菜チーズトースト』など、材料が2つ3つくらいで、わざわざ買い物に行かずとも家にありそうなもの、代用できそうなものばかりで、それでいて美味しそう。
『プチトマトのおひたし』なんてものすごく簡単そうで、それでいて見た目も美しく味も良いらしい。すごい。
『プチトマトのおひたし』には、それを作るマメさを褒められたオカヤさんが、すこし悩んで「楽しいよ」と返すシーンがある。
誰かにとっては「頑張ってやること」でも、ほかの誰かにとっては「楽しいからやること」になるという価値観、感覚の違いがおもしろいし、それを「(自分にとっては)楽しいよ」と示すのが素敵だなと思った。
旬の食材に季節の移ろいを感じたり、夜中の甘味にささやかな幸福と罪悪感を感じたり。
めんどくさがりなくせにそういうことには憧れを抱いているわたしは、オカヤさんの程よい手の抜き方を素晴らしいと思った。こんな大人になりたいなあ。